こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長(@3Lmuseum)です。
アートとデザインの違いを説明できますか?
正直に言って、両方とも意味が似ているイメージがあり、何が違うのかよくわかりませんよね。
このように、アートとデザインの違いを定義することはとても難しいのです。ですが、アートとデザインには確かに違いがあります。
それが、「アートは感性」「デザインは理性」で生み出されるという点です。
この記事では、アートとデザインのそれぞれの特徴を整理し、どんな違いがあってどんな共通点があるのかを解説していきます。
・アートとデザインの特徴の比較
・アートとデザインの境界線について
・アートとデザインの持つ役割
アートとは?
まずは、アートの特徴について整理していきましょう。
見たままの特徴で言うと、額縁や彫刻、そして高額品といったイメージがあります。なんだかあまり生活の中では見かけない要素がアートにはありますね。
「額縁に入っているデザイン」とはあまり言いません。見た目の違いといったところにも、両者の違いはありそうです。
そして、冒頭の「アートは感性」ということについて。
アートはなぜ、どういった意味で生まれてくるのでしょうか。
世の中にいるアーティストたちは、アートを生み出す際に、何かメッセージや自分の感情を添えて生み出します。
例えば、自身の感情や想像を絵に表現したり、風景などの移り変わる姿の一瞬を収めたり、社会風刺やアンチテーゼを絵に残したりします。
このように、アートはアーティストの感情にしたがって生み出されるケースが多いのです。
故に、アートとは感性と表現しています。
最後に、技法について。
アートにおける技法とは、自身の感性を引き立たせるためのツールです。
例えば、ピカソは『キュビズム』という表現方法を用いてリアルを追求し、バンクシーは『グラフィティアート』を残すことで社会にメッセージを残しています。
これらの点から、数多くのアーティストは自分が表現したいものを作品として世に生み出すために試行錯誤を繰り返し、自分だけの感性の表現方法を模索しました。
そのため、技法は感性を引き立たせるためのツールと呼べるのです。
デザインとは?
続いて、デザインの方を見てみましょう。
見た目のイメージとしては、パッケージやロゴ、フライヤーなどの二次元的なものもあれば、建築やデザイン家具などの三次元的なものも挙げられます。こちらは生活の中に潜むものばかりです。
また、安価・大量というキーワードもイメージできるかと思います。
また、デザインの特徴として、理性と表現しました。
このデザインが生まれる過程としてあるのが目的です。
例えば、「この商品をどのように魅力的にアピールすることで人が購入するか」「最近はこんなおしゃれな空間が流行っているからこれを参考にすれば多くのお客さんの流入が狙えるだろう」といった目的が、デザイン誕生の背景には含まれています。
つまり、ユーザーの獲得や商品の販売促進といった目的がデザインの生まれる理由であるのです。
故に、デザインは理性であると表現しています。
技法の面で言うと、人間を動かすためのあらゆる工夫が施されています。
フォントや配色、コントラスト、比率、配置など。考えに考え抜かれた型にはめて、デザインは構成されていきます。
この工夫があるからこそ、馴染み深いような親しみやすいような、生活の一部に必ず存在するデザインが生まれるのです。
アートとデザインの線引きは曖昧
ここで、両者の特徴を整理してみましょう。
・額縁や彫刻など
・高額
・非日常的
・感性
・自身の感情、メッセージを表現する
・技術は感性を引き立たせるためのもの
・パッケージ、ロゴ、建築など
・安価、大量
・日常的
・理性
・ユーザー増加、販売促進を目的とする
・技術は目的を遂行するためのもの
比較してみると、だいぶ違うように思えてきませんか?
しかし、一概には言うことができません。
上記のような比較に当てはまらないアートやデザインがたくさん存在しているのです。
その例として、『レディメイド』が挙げられます。
レディメイドとは、元々ある既製品を加工してアートとしたものです。マルセル・デュシャンというアーティストの、男性用小便器にサインをしただけの『泉』という作品が有名です。
これは果たしてアートなのでしょうか? それともデザインなのでしょうか?
レディメイド以外にも、芸術家が手がけた舞台やイベントのポスター、コラージュなんかがそうと言い切れます。
このように、アートとデザインの境界線は曖昧になっている場合もあります。
なぜ、境界線が曖昧なのか
一体なぜ、アートとデザインの境界線は曖昧になってしまっているのでしょうか?
アートとデザインは、それぞれが感情や目的を表現するために生まれます。ただ、その生まれた意義だけを永遠に持っているとは限りません。
その作品の意味や価値がどんどんプラスされていくのです。
つまり、そのプラスされた意味や価値によって、アートにもデザインにもなるということです。
過去に現代美術館の床にメガネを置くいたずらをした人がいました。
実際はただのメガネなのですが、美術館にあるということから何かしら意味があると思い込み、メガネの前で立ち止まり意味を考える人が続出したそうです。
このデザインとして生み出されたメガネは、美術館に放置された瞬間からアートとしての価値を得たのです。
逆のパターンで言えば、ミュージアムショップのお土産です。
元はアートとして生み出されたものが、展覧会のユーザーを増やすための目的をもつデザイン商品に生まれ変わるのです。
このように意味や価値が加わることによって、アートにもデザインにもなり得るのです。
アートにもなればデザインにもなる事例がたくさん多いことから、境界線は曖昧になっていったのではないでしょうか。
まとめ
アートとデザインには、確かに違いがあります。
ただ、生み出されてからあらゆる価値や意味が加わることにより、その違いは曖昧になってきます。『アートは感性・デザインは理性』、ただしそれをずっと保つとは限らない。館長はこのように結論づけます。
デザイナーの石岡瑛子や佐藤可士和の作品が美術館で企画展として展示されたり、数々のアートがユニクロでTシャツとして発売されたりするように、アートとデザインは境界線を曖昧にしながらも共存しています。
この共存関係があるからこそ、明確な違いがぼやけているのかもしれません。
ただし、両者はお互いに人を動かすという共通点があります。
つまり、動機を与えることで新しい価値観を与えてくれるのです。
そのため、アートを見ることもデザインを見ることも立派な教養と言えるのです。
アート鑑賞のみならず、周りの生活に潜むデザインを鑑賞することで、どんどん新しいことを知り、教養をつけていきましょうね。