西洋美術史を理解して、アートの歩みを知ろう!【世紀末美術編】

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教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

この記事では、『世紀末美術』について解説していきます。

世紀末美術とは、19世紀末にヨーロッパ方面で広がった、産業革命がもたらした科学や機械化に反発した芸術運動のことを指します。

館長

日本だと、江戸時代末期(幕末)から明治時代にかけての頃です。

主に世紀末美術には、以下のものが含まれ、様々な芸術やデザインが誕生した時代でした。

・ラファエル前派
・象徴主義
・分離派
・アーツ・アンド・クラフツ
・アール・ヌーヴォー

印象派やルネサンスと比較してしまうと、世紀末美術とはあまり馴染みのない言葉かもしれません。

しかし、この世紀末美術を代表する画家にはムンククリムトなどがおり、一度は聞いたことある顔ぶれが揃っています。

館長

世紀末美術を知ることで、「この人もそうなんだ!」といった新しい発見が多いかもしれません。(館長が初めて学んだ時はその感覚でした)

それでは、上述した5つの世紀末美術で活躍した画家とその作品について解説していきます。

目次

ラファエル前派

ラファエル前派とは、イギリスを発端としたラファエロ以前の絵画に魅せられた芸術家のことを指します。

ラファエロはルネサンスの3大巨匠の1人であり、絵画のお手本とされ続けてきた偉大な人物です。

館長

詳しくは、ルネサンスの解説記事も読んでみてください!

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ラファエル前派最大の特徴として、細部描写の精密さがあります。

この精密な観察眼が、象徴主義をはじめとした後の美術に影響を与えていきました。

ちなみに、ラファエル前派は2つの世代に分類することができます。

第一世代はロマン主義的で文学的、第二世代は唯美主義的で装飾性が高いことが特徴です。

館長

余談ですが、『ヴィーナスの誕生』や『春』を描いたボッティチェリを見出したのは彼らです。さすがの観察眼の持ち主ですね……!

そんなラファエル前派の画家たちの作品をいくつか紹介します。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ

『プロセルピナ』(所蔵:テート・ブリテン)

特徴:ラファエロ以前の絵画を評価した立役者。繊細で美しい女性の絵。

ジョン・エヴァレット・ミレイ

『オフィーリア』(所蔵:テート・ブリテン)

特徴:綿密な細部描写と装飾性が特徴。『オフィーリア』は彼の代表作で、シェイクスピアの『ハムレット』が題材。(モデルの人は、冬場に風呂場でずっとこのポーズをさせられていたそう…)

象徴主義

世紀末は、不安感であふれていました。

世紀の変わり目であることや、技術の発達した社会への戸惑いや恐れといった、変化への不安のようなものがあったのかもしれません。

これを「デカダンス」と呼びます。

このデカダンスの元、象徴主義は誕生しました。

象徴主義は身の回りのものや風景を描きつつ、その中に特別な意味を込めるほか、目に見えない精神世界のようなものを表現することが特徴です。

この安定しないご時世の中で、不安や苦悩、運命や願望を象徴的に表現しました。

ギュスターヴ・モロー

『オイディプスとスフィンクス』(所蔵:メトロポリタン美術館)

特徴:サロメという聖書中に登場する悪女を、妖艶に運命的に描いた。

オディロン・ルドン

『キュクロプス』(所蔵:クレラー・ミュラー美術館)

特徴:幻想的な画風とグロテスクな雰囲気が特徴。まるでダークファンタジー。

アルノルト・ベックリン

『死の鳥』所蔵:メトロポリタン美術館)

特徴:象徴主義では珍しい風景を描いた画家。自然と幻想を融合させたような作品を描いた。

エドヴァルト・ムンク

『叫び』(所蔵:オスロ国立美術館)

特徴:恐怖や不安感を描いた。『叫び』はムンク曰く、「自然を貫く果てしない叫び」に対して耳を塞いでいる様子であり、この描かれた人物が叫んでいるわけではないそうです。

ウィーン分離派

ウィーン分離派は、名前の通りオーストリアのウィーンで興った芸術運動です。

クリムトを中心に、装飾的な表現を特徴に広がっていきました。

装飾的を具体的に言うと、まさに豪華絢爛です。

黄金をはじめとしたきらびやかな表現が特徴としてあるのです。

ちなみに分離派は、伝統を重んじる保守的な文化からの脱却を意味しています。

どんな作品が描かれたのか、いくつか見ていきましょう。

グスタフ・クリムト

『接吻』(所蔵:オーストリア・ギャラリー)

特徴:金を用いた装飾的絵画と奥行きのない構図。

エゴン・シーレ

『自画像』(所蔵:レオポルド美術館)

特徴:エロスや死と行った過激な作風やテーマ。

アーツ・アンド・クラフツ

アーツ・アンド・クラフツは、イギリスで興ったデザイン運動です。

ウィリアム・モリスを中心とした運動で、大量生産品の粗悪さを批判的に捉え、機械ではなく手仕事にこだわる総合的な芸術・社会改革運動を目指しました。

装飾的なデザイン植物をモチーフとした有機的なデザインが特徴的です。

このデザイン運動は、のちのアール・ヌーヴォーやウィーン分離派にも影響を与えていきます。

ウィリアム・モリス

『ステンドグラス』(所蔵:トリニティー協会)

特徴:作る喜びを取り戻すことを理想とした。このステンドグラスはバーン=ジョーンズという画家との合作。

アール・ヌーヴォー

アール・ヌーヴォーとは「新しい芸術」を意味する、通称サミュエル・ビングという画商がパリで開いた美術工芸品店に由来する芸術運動です。

「工業化された社会の中で、芸術の意味を考え直す」というスローガンの元、アーツ・アンド・クラフツ運動と結びつきながら大量生産を批判しました。

清らかな曲線による有機的なフォルム、そしてジャポニズムの影響を受けたデザインポスター絵が数多く誕生しました。

また、アーツ・アンド・クラフツ運動と共通で、手作りにこだわる面もアール・ヌーヴォーの特徴とも言えます。

アンリ・ド・トゥルーズ=ロートレック

『ディヴァン・ジャポネ』(所蔵:トゥールーズ・ロートレック美術館)

特徴:ポスターを芸術の域に高めた画家。絵画も描いている。

アルフォンス・ミュシャ

『黄道十二宮』(所蔵:ミュシャ美術館)

特徴:舞台のポスターを主に製作した。巨大なスラヴ叙事詩の絵画も有名。

エミール・ガレ

『ユリとヒナギクの花瓶』(所蔵:プティ・バレ美術館)

特徴:ガラス工芸を代表する芸術家。

まとめ

世紀末美術について解説しましたが、いかがだったでしょうか?

世紀末美術を一言で表現すると、「産業革命で科学と技術が進歩して明るい未来を期待する人々と、それに不安を感じる人々の期待と不安が入り混じる時代から生まれた芸術」です。

そんな反発した時代から様々な芸術が誕生したと思うと、やはり社会情勢や人間の心情は芸術に大きく影響を与えるのだなと気づかされます。

不安感が続く現代において、この世紀末美術の頃の心情は似ているのかもしれません。

館長

そんな時代から生まれたと思うと、「なんだか共感を感じる……」と思える作品に出会えるかもしれませんね。

世紀末美術は、ルネサンスや印象派にも引けを取らない名作揃いなので、これを機にたくさん興味を抱いていただけたら嬉しい限りです!

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この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




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