『5W1H』を使ってアート鑑賞をしてみよう!

こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

「絵画を鑑賞する時、なんとなくいい雰囲気の絵だけど、何に注目して鑑賞したらいいのかわからない……」

こんな気持ちになったことはありませんか?

先に解決策を述べると、そんな時は自分に対して『5W1H』を使って質問を投げかけてみましょう。「なぜこう思ったのか?」を5W1Hに当てはめて深掘りしていくイメージです。

館長
この深掘りすればするほど、観察力や思考、教養などがたくさん身につきます!

今回は作品に対する掘り下げをしやすくするための、絵画を鑑賞する際に役立つ自分に対してのテンプレート質問集を紹介します。

より具体的なイメージをしてもらうために、実際の絵画を用いて解説していきます。
5W1Hに着眼点を絞って、楽しく絵画を観察して教養を深めていきましょう!

◎この記事を読んでわかること
深い思考力や観察力を手に入れることができる鑑賞法
5W1Hを用いたアートの鑑賞方法
アート鑑賞をする上で最も意識したいポイント
目次

準備:今回扱う絵画

絵画芸術
こちらはヨハネス・フェルメールという作家の『絵画芸術』という作品です。
今回はこちらのアートを用いて、5W1Hを使った鑑賞法について解説していきます。

さっそくですが、自分に5W1Hの疑問を問いかけながら鑑賞していきましょう!

5W1Hに当てはめて、自分に質問を投げかけてみよう

5W1Hという単語。学生の頃に英語の授業に出てきたアレです。
ビジネスの基本と呼ばれるため、現在もなじみ深い人が多いと思います。

Who(誰が)
When(いつ)
Where(どこで)
What(何を)
Why(なぜ)
How(どのように)

ここでおさらいしておくと、上記の疑問詞のことを指します。

なんと、この5W1Hに沿って疑問を投げかければ、わかりやすくアートを鑑賞することができてしまうのです。

では実際に、5W1Hを使った質問を作品に投げかけてみましょう!

・Who(誰が)

この絵には誰が描かれているのでしょうか?

まず、画面手前に髪の長い人物(男性?)、画面奥に女性が描かれており、この絵には2人の人物が描かれていることがわかります。

手前の人物は椅子に腰掛けて、イーゼル(画架)の上のキャンパスに絵を描いています。
この人物は画家なのでしょうか?

一方、女性は随分と変わった格好をしています。
右手に持っているのはラッパでしょうか?
左手には分厚い本。何かの専門書か何かでしょうか?
ユニークな髪飾りもしていますね。

このように、人物に関する問い(Who)の元に観察してみると、新たな疑問がどんどん浮かび上がってきました。

これらの疑問について、『What』以外の視点でも考えてみましょう!

・When(いつ)

この絵は何時頃の場面を描いているのでしょうか?

女性に注目してみましょう。
女性の左側から光が差し込んでいることから、太陽が登っている時間であると推察できます。
となると、時間的には朝〜昼、夕方前くらいの時間帯であると予想できますね。

「本当に自然光? 照明ではないのか?」という疑問も浮かび上がると思いますが、それもこの絵で証明できるのです。

フェルメールが生きていたのは1600年代。電球や蛍光灯が発明されたのは1870年代以降とされています。

また、この絵の光の色は明るい白色です。
当時の夜の光は炎のオレンジ色のみであったため、夜であるなら画面が暗く、ぼんやりとオレンジ色の灯りに包まれながら女性が浮き上がることになります。

さらに、シャンデリアのようなものが右上に描かれており、当時はまだ炎を用いていたことも読み取れますね。

これらのことから、差し込む光が自然光ではなく、隠れた場所にSONYの人工照明セットがあって照らしているという可能性を消すことができます。

絵を観察するだけで、時間(Whenまでもを考察できることがあるのです。

今回のように、光や闇に注目してみて想像を膨らませていきましょう!

・Where(どこで)

この絵がどこで描かれているのかを考えてみましょう。

単純に考えると、画家のアトリエでしょうか。
ただ、描かれているものに注目してみてみると、なんだか特徴的なものに目がいきます。

なんだか画家のアトリエにしては、豪華すぎる気がしませんか?

画面の左側3分の1を覆っているカーテンにはきらびやかな紋様が描かれていたり、頭上には先ほども出てきたシャンデリアが存在感を放っていたりしています。

ほかにも、女性の背後に大きな地図のようなタペストリーが飾られていたり、床は白黒のタイルで作られていたりと、なんだか豪華な雰囲気の場所(Where)であることがわかります。

・What(何を)

ところで、彼らは何をしているのでしょうか?

この問いに関してはもうみなさん気づいているのではないでしょうか。
手前の画家らしき人物が、奥の女性を描いています。

このことから、2人の関係性は「画家とモデル」ということがわかりますね!

つまり、これは『モデルを描く画家を描いた作品』(What)ということになります。
なんだかややこしくて、頭がこんがらがりそうになりますね。

ただ、この斬新な構図は今でも新たな視点を気づかせてくれます。

・Why(なぜ)

なぜ画家はモデルを描いているのでしょうか?

「なぜ?」と言われると難しい質問のように聞こえますが、ここはシンプルに考えましょう。
この場合は、「作品を制作するため(Why)」くらいの答えでいいと思います。

だんだんと鑑賞の回数を重ねてストーリーを想像できるようになると、さらに鑑賞を楽しむことができることに加えて、考える力もついてきます。

「本当どうかは答えを見ないとわからないけれど、こうだったら面白いな!」と考えてみて、真実と見比べてみるのも面白いかもしれませんね!

・How(どのように)

「どのようにしているのか?」
この質問を投げかけてみることで、ほかの質問に比べ多くの情報を得ることができます。

女性はどのような表情をしているでしょうか。
視線を斜め下左下に向けて、口は微笑んでいますね。

この表情は画家の指示によりしているものなのか、あるいは描かれていることに対しての恥じらいなのか。真相は不明ですが、想像が膨らみますね……!

もう一方の画家は、どんな様子でしょうか。
背を向けているため女性のように表情を汲み取ることはできませんが、彼のキャンパスに注目してみましょう。

彼はどうやら作品の描き始めのようですが、一番最初に描いているのはモデル自身ではなく、ユニークな形をした髪飾りです。

ということは、この髪飾りは彼が描こうとしている作品にとって重要なモチーフなのかもしれませんね。

5W1Hを用いたアート鑑賞まとめ

いかがでしたか?

このように5W1Hの質問をするだけでも、かなり詳しく観察することができたのではないでしょうか。

Who(誰が) ex)誰が描かれているか?
When(いつ) ex)何時頃の場面か? いつの時代に描かれたのか?
Where(どこで) ex)どこで描かれているのか? どこを描いているのか?
what(何を) ex)何をしているのか? 何が起きているのか?
why(なぜ) ex)なぜこのような行動をしているのか? なぜこれを描いたのか?
how(どのように) ex)どのような状態か? どのように描かれているか?
館長
上記の質問は一例ですが、これらを自身の問いに当てはめることで、観察眼を養っていきましょう!

フォーカルポイントを意識してより一歩踏み込んだ問いをしてみよう

ここでもう一歩だけ踏み込んだ質問をしていきましょう!

その時に意識するものが、『フォーカルポイント(絵の中で一番目立つポイント)』です。

絵には必ずといっていいほど画面内に一番目立つポイントが存在しており、このポイントのことをフォーカルポイントといいます。

画家が「ここに注目してね!」とあらかじめ用意しているポイントと考えていただければわかりやすいと思います。

フォーカルポイントの探し方はいくつかありますが、ここでは最も代表的な方法を一つ紹介します。

それは、「コントラストがはっきりしており、目立つ箇所を探す」ことです。
コントラストとは、明暗のことです。

絵画芸術

この絵の中で最も明暗がはっきりしている所はどこでしょうか?

館長
モデルの女性が最もコントラストがはっきりしていて、目立っているかと思います。

特に女性が手にしている楽器・本・髪飾りのどれもが明るく描かれていることから、この絵のフォーカルポイントは彼女あるいは特徴的な格好であると言えますね。

このように、「フォーカルポイントはどこだろう?」という疑問を抱くことで、より深まった思考を巡らせることができます。

まとめ

この記事では、5W1Hを用いた問いの立て方フォーカルポイントを意識した問いの立て方の2つを紹介しました。

簡単な質問にもかかわらず、かなり詳しく観察することができたのではないでしょうか?

最後に、このモデルの女性について答え合わせをすると、この女性は「歴史の女神クリオ」の象徴と言われているそうです。

右手に持っているラッパ、左手の分厚い歴史書、髪飾り(月桂樹の花冠)という物をみることで、これがクリオであるという理由になります。

ちなみに、このように誰かを表すために決められた持ち物のことを『アトリビュート』と言います。

館長
このように、持ち物を観察することで正体が見えてくる絵画もあるのがアート鑑賞の面白い所ですね!

この記事で紹介した5W1Hの質問をするだけでも、1つの絵画をより深く楽しく観察することができるようになるので、ぜひ活用してみてください!

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この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




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