観察力を鍛えるワークショップ Vol.10

workshop-thumbnail-vol10

こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

観察力を鍛えるワークショップへようこそ!

今回のワークショップでは、作品の中に画家が描かれている作品を使って進めていきます!

所要時間は約5分です!

また、このワークショップでは次のものを必要とします。
ありあわせで大丈夫なので、読み進める前に手元に用意しておいてください!

・文字が書ける紙
・鉛筆・シャープペン・ボールペンなど

目次

作品を見てみよう!

それでは作品の紹介です!

まずは2分間で「アウトプット鑑賞」をしてみましょう!
作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」を自由に書き出してみてください!

アトリエ舟で描くモネ
所蔵:ノイエ・ピナコテーク

あなたは気づいた?サクッとチェック

ここでちょっと難易度の高いチェックポイントを紹介します! あなたは気がつきましたか?




どこからそう感じた?

次は自分の感想の中から1つ選んで、「どこからそう思ったのか」を深掘りしてみましょう!

より鮮明に観察することができるようになります。

例えばこんな感じです!

何となくポジティブな印象を受けた
→全体的に明るい雰囲気で描かれているからかな。あとは船の中でポージングしている女の人が笑っているように見えるからかもしれない。

絵の中の画家が誰なのか気になった
→この作品の視点的に、絵を描いている本人ではないと思う。だとしたら誰なのだろうか。それとも実は現実の風景ではなく、作者本人が自分の理想のイメージを描いた作品なのかな?人物の情報がないと気になる。

ぱっと頭に浮かぶことで大丈夫です。それでは気楽に1分間でやってみましょう!

この作品はどんな作品?

今回、ワークショップで使った作品は、19世紀のフランスを代表する画家エドゥアール・マネが描いた『アトリエ舟で描くモネ』という作品です。

館長

なんと、マネがモネの製作中の姿を描いた作品だったのですね!

ジャンルとしては『印象派』に分類されます。
印象派とは、19世紀後半のフランスで起こった芸術運動のことを指します。

印象派の絵画の特徴としては、大胆な筆のストローク外で作品を制作するスタイル空間と時間による光の質の変化の正確な描写などが挙げられます。

印象派でほかに有名な画家としては、クロード・モネやルノワール、ドガなどが挙げられます。

作者について

マネは『近代絵画の父』とも言われ、絵画史的にも重要な存在となっています。

キリスト教や古典をテーマとした作品が高く評価される時代に対して、実在する人間の姿をそのままに描いたり、大胆な筆致を使ったり、光を今までにない方法で描き始めたりと、伝統的な約束事にとらわれない新しい手法に積極的に取り組みました。

こうしたマネの作風が、後に印象派の先駆けとなりました。

そんなマネの元には、印象派として日本でも有名なモネやルノワール・ドガが集まり、マネは彼らの指導をおこなっていたとされています。

この作品は未完の状態?

この作品で描かれている舞台はセーヌ川で、モネが住んでいたアルジャントゥイユの家の近くです。

そこにマネが友人訪ねにやってきた際に描かれました。そして、モネが描いているのは、彼の妻カミーユです。

また、実はこの作品は未完成のものとされている説が有力です。

その理由としては、モネと妻カミーユがアトリエ舟内で長時間のポージングを続けることが難しかったためとされています。

館長

マネの作品の中でも極端に大胆な筆致で描かれていたのは、未完だったからなんですね。

完璧に仕上げられたわけではなかったようです。
そして、モネが描いているキャンバスにもその特徴がみられます。

実は、モネの視点とは少し違う風景が描かれているのです。

本来であれば妻のカミーユが描かれているはずですが、全くそれらしきものが見当たりません。
もしかすると、後で直すつもりだったのかもしれませんね。

マネとモネの交流

生前マネとモネの間には深い交流がありました。

年齢的にはマネの方が8歳年上となっており、経済的に支援していた時期もありました。

一般的に大成功しているイメージの強いモネですが、実は彼が成功し始めるのは40歳を超えてからです。
それまでは、かなりの貧困生活を送っていたようで、マネの支援に大きく助けられていたようです。

この作品が描かれた当時の年齢はマネが42歳、モネが34歳だとされています。

伝説的な画家の若かりし頃の姿が描かれているのですね。

館長

とても暖かく、観ていて優しい気持ちになりますね

ちなみに、マネは友人をとても大事にする人でありました。

友人を描いたこの作品も気に入っており、大切に扱っていたとのことです。

この作品をあなたはどう思う?

では最後に、この作品を観てあなたは今どう思いますか?

作品をよく観察し、背景を知ったあなただからこそ出てくる感想がきっとあるはずです。
自由に書き出してみましょう!

ここでほかの人の感想も紹介させていただきますね。

「ちょっと雑なイメージを受けてたけど、未完成の状態だと知ったら納得。でも絵画ってこんな感じでもありなんだと思った。もっと高尚なものじゃないとダメなのかと思っていた。」

「日本ではモネのことは誰でも知っているけど、マネはあまり知られていないよなと思った。重要度でいうと同じくらい凄いのに、どうしてこの違いが生まれるんだろうと不思議に思った。」

まとめ

今回はフランスの伝説的な画家、マネの作品を紹介させていただきました!

最後に、この記事のポイントを簡単にまとめると以下のとおりです。

・マネは近代絵画の父と呼ばれており、積極的に新しい手法を取り入れた作品を作ることにより印象派の先駆者となった
・この作品に描かれているのはモネとその妻カミーユで、マネが彼らの家を訪れた際に描かれたもの
・作品自体は未完となっており、筆のストロークが極端に大胆であったり、モネのキャンバスに描かれている絵がモネの視点と異なっているのはそのため

絵画の中には、未完の状態でも人を惹きつける作品が多く存在しています。

なぜ未完なのに魅力があるのかを考えてみるのも面白いかもしれませんね。

以上で今回のワークショップは終了です!

館長

印象派としては日本では比較的認知度が低いマネですが、これを機によかったら彼のほかの作品もチェックしてみてくだい!

workshop-thumbnail-vol10

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




目次
閉じる