観察力を鍛えるワークショップ Vol.7

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こんにちは!
教養派アート入門メディア『3L museum』を運営している、白くま館長@3Lmuseum)です。

観察力を鍛えるワークショップへようこそ!

今回のワークショップでは、とある浮世絵作品を紹介していきます。
世界が認めた日本の芸術。じっくりと観察して、力をつけていきましょう!

所要時間は約5分です!

また、このワークショップでは以下のものを必要とします。
ありあわせで大丈夫なので、読み進める前に手元に用意しておいてください!

・文字が書ける紙
・鉛筆・シャープペン・ボールペンなど

目次

作品を見てみよう!

それでは、今回のワークショップで使用する作品の紹介です!

まずは2分間で「アウトプット鑑賞」をしてみましょう!
作品を見て「気づいたこと」や「感じたこと」を自由に書き出してみてください!

所蔵:メトロポリタン美術館

あなたは気づいた?サクッとチェック

ここでちょっと難易度の高いチェックポイントを紹介します! あなたは気がつきましたか?




どこからそう感じた?

次は自分の感想の中から1つ選んで、「どこからそう思ったのか」を深掘りしてみましょう!

より鮮明に観察することができるようになります。例えばこんな感じです!

なんで左側が隠れているんだろうか
→「とっても綺麗な浮世絵! でも、なぜ風景を画面全体に描くのではなくて、一部を隠して描いているのだろうか?」

手前に花が描かれている
→「一見すると水辺を描いたように見える作品に見えるけれど、手前の花が何か重要な意味があるんじゃないか?」

ぱっと頭に浮かぶことで大丈夫です。それでは気楽に1分間でやってみましょう!

この作品はどんな作品?

深掘りお疲れ様でした。少し頭を使って疲れたと思います。

ここで、この風景が素敵な浮世絵作品について紹介します。

作品の解説

これは「名所江戸百景 真崎辺より水神の森内川関屋の里を見る図」という作品で、1856年〜1858年ごろにかけて歌川広重によって制作された「名所江戸百景」という連作のうちの1つです。

今回取り上げたものはアメリカのメトロポリタン美術館に所蔵されているもので、「江戸の小さな眺め」とも呼ばれています。

歌川広重は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師の1人です。小学校の日本史の授業などで名前を聞いたことある人も多いのではないでしょうか?

「名所江戸百景」とは、名前の通り江戸の名所を浮世絵として描いたものです。広重の集大成とも言える連作だったものの、本人は完成前に亡くなってしまい、二代広重によって補筆・完成されました。

そんな江戸の名所百景のうちの1つが、この「真崎辺」の風景です。真崎辺は、現在だと荒川区の石浜神社という神社の周辺であるそうです。

真崎辺周辺には、隅田川の景色が広がっています。いかだや帆船といった様々な船が往来していますね。

この水辺のグラデーションの美しさも、浮世絵の真骨頂とも言えます。この技法を『吹きぼかし』といいます。

館長

今回は、この浮世絵から「どんなシチュエーションなのか」「いつの風景なのか」を描かれている描写やモノから考えていき、ヒントを探す力をつけていきましょう!

視点に注目してみよう

さて、この作品ですが、どのようなシチュエーションが描かれているでしょうか?
具体的にどのような場所で、誰の視点で描かれているのかわかりますか?

館長

この作品は遠近感のある絵であり、手前と奥で構成されています。

手前部分を見てみると、障子が右手に描かれていたり、花瓶に椿の花が生けてあったりすることに気づきますね!
これらの手前部分に描かれている要素から、室内であることがわかります。

また、当時の神社の境内には、料亭などの多くの店が並んでいました。
その1つである甲子屋という料亭からの隅田川の景色が、この作品には描かれています。

となると、室内から景色を覗いているのは作者あるいはお客さんということになります。

館長

隅田川なのでオーシャンビューとはなりませんが、こんな絶景でご飯を食べたいですね……!

描かれているモノから時期を読み取ろう

次に、この作品からは描かれているモノから時期を予想していきましょう!

ヒントとなるのが、描かれている2種類の花です。

この作品には、手前の花瓶に生けてある「椿の花」と、窓のすぐ後ろに見える「梅の花」の2つが描かれていますね。
これらの花が咲く季節はです。

館長

描かれているモノから季節や時間を読み取ることで、より作品の世界観に入り込むことができるのです。

この観点で見ていくと、空を飛ぶ無数の鳥の群れからも季節を読み取ることができます。

どのような種類の鳥なのかを特定することは困難なものの、俳句には秋冬に日本で冬を越した鳥たちが群れをなして帰っていく姿を「鳥帰る」という春の季語としているのです。

館長

作品の中に、季節のヒントとなるモノが描かれているのは、四季のある日本独特の描写なのかもしれませんね!

この作品をあなたはどう思う?

では最後に、この作品を観てあなたは今どう思いますか?
作品をよく観察し、背景を知ったあなただからこそ出てくる感想がきっとあるはずです。

自由に書き出してみましょう!

ここでほかの人の感想も紹介させていただきますね。

「1つの作品に描かれているモノをヒントに、こんなに世界観を広げられるなんて驚きでした! 視野が広がったような気がします。」

「俳句に季語があるように、日本で生まれた作品には四季の変化がわかりやすい作品が多いなと思いました! 情景が浮かびやすいので、積極的にどんな季節の作品か考察していきます。」

まとめ

今回は日本の絶景を描いた作品を紹介させていただきました。

この作品の見どころをまとめると、下記のとおりです。

・奥行きのある立体的な作品の構図
・作者あるいはお客さんの視点で描かれるシチュエーション
・描かれたモノから季節などの時期を把握できる

この作品から、視点や季節といった別の角度で考察していくような力をつけていくことができたのではないでしょうか?

描かれているモノの意味や視点を考えながら鑑賞していくことで、想像力や多角的な視野を養っていきましょう!

以上で、今回のワークショップは終了です!

館長

実際にこのあたりに行ってみて、浮世絵と照らし合わせてみるのも楽しいかもしれませんね!

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この記事を書いた人

1996年生まれ。大学卒業後、美術館でナビゲーターとして教育普及に従事。教養としての芸術を広め、芸術に対する価値観やイメージをアップデートしたいという想いから、2021年3月に「3L museum」を開設。牛乳キャップやチロルチョコの包み紙など、芸術的価値があると感じるモノの蒐集が趣味。




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